第57回(3/5) 〜ラブ卒業 前編〜   毎週月曜更新

なみ「卒業シーズンだね・・・。」
おさむ「そっか、そう言えば今日も町で花束を持った人をたくさん見かけたよ・・・そっか、卒業式だったんだね。」
なみ「仰げば尊し・・・我が師の恩・・・。こんな素敵な歌詞作った人ってどんな人だろう。」
おさむ「そうだよね〜。卒業式で歌った時は全然気付かなかったけど、今じっくり考えると本当にいい詩だね・・・」
アキラ「お!なんや?和菓子でも買ってきたんか??」
なみ「はあ〜あいかわらずバカなんだから。和菓子じゃなくて我が師の恩・・・まあ、こんなバカ相手にしても始まらないから・・・。」
アキラ「何を!」
なみ「あ、そういやアキラ宛に葉書が来てたわよ・・・ハイ。」
アキラ「チッ・・・上手いこと話そらしよって・・・・・・ウワッ!!!」
おさむ「ワッ!ビックリした!なんなのさ!」
アキラ「遂に、ガキができよったか・・・人生終わったな・・・・。」
なみ「何ブツブツ言ってるの?ねぇ、なみも見ていいの?キャッ!かわいい〜。見てみておさむ、この赤ちゃん。」
おさむ「うわ〜本当だ〜。かわいいね〜。ちっちゃいね〜。それにしても赤いね〜。」
なみ「おさむ・・・赤ちゃんあんまり見たことないのね・・・。ねぇねぇ、アキラ、この一緒に写っているパパって誰?お友達?」
アキラ「あ、まあ一応な・・・。高校時代の友達・・・というより子分みたいなもんやな。」
なみ「ふ〜ん・・・子分ね・・・アキラが単にそう思ってただけでしょ・・・・。」
アキラ「そうか、ついにガキんちょがでけたか・・・。ほ〜ん・・・。」
おさむ「何か訳ありって感じだね・・・。」
アキラ「いやいや、そんな大した事はないんや。そいつ、彼女・・・いや奥さんにな、卒業式の、ほら生徒会長が最後にあいさつするやろ・・・そん時に告りよったんや。」
なみ「えっ?本当!?じゃあ、この人生徒会長だったんだ・・・。うわ〜なんかロマンチックだね・・・。」
アキラ「そやろそやろ。で、それを仕向けたんがおいらなんやな・・・これが・・・。」
なみ「えーー!!ウッソー!また、いつものように暴力を振るったんでしょう!!」
アキラ「アホか!おいらがいつ暴力振るったんや!ホンマに・・・!いや〜懐かしいね〜。あれはあれは、数年前のまだ春が来る前・・・。世は卒業シーズン真っ盛り・・・時においら18歳、そしてそいつも18歳・・・。」
なみ「当たり前じゃない・・・、前置きはいいから何が懐かしいか早く言ってよ。」
アキラ「なんや、趣のない奴やの〜。その連れ、ひろしっていうんやけどな、入学当初から運動はあかんかったけど、頭は超偉くて、常に生徒会の役しょったんや。で、彼女はというと、これまた入学当初からの超ヤンキーでな、中学の時から結構有名やったんや。」
なみ「ほうほう、なんか面白そうじゃない。それで、それで・・・。」(つづく)

***前回***
第58回(3/12) 〜ラブ卒業 後編〜   毎週月曜更新

なみ「で、彼女が超ヤンキーで、アキラのお友達は生徒会役員を毎年つとめるほど秀才で・・・。」
アキラ「そうそう。それでな、あるはずのない接点があったんやな。」
なみ「接点ってどこでどこで!?」
アキラ「何を隠そう、朝のあいさつ運動や!」
おさむ「も、もしかしていつも朝早くから校門で立ってあいさつしてるあれ・・?」
アキラ「お、よう知っとるな。さてはおさむも経験有りやな・・・おはようございまーすってたすきでもかけとったんか・・ククククッ・・・。そんでや、いっつも遅れてきよった女がまさにそのヤンキー姉ちゃん!しかも、その遅れ方がいつもきわどい。校門しめるか、しめへんかっちゅう時に猛ダッシュで走ってくるんや。その上、毎回わざとこけたり、おなか痛いとか座り込んだりして同情をあおっとったんや。」
なみ「アハハハハ・・・で、それで恋心を抱いたわけか・・・。」
アキラ「チッチッチ・・甘い甘い、それはまだまだ序章にしかすぎん。その後、全然何もなかったんや・・・。そうやって数ヶ月たったある日事件は起こった。そいつ弱いくせに正義感あるからな、たまたま校内で多数のヤンキーがタバコ吸ってたのを注意したんや。ほたら、ようある話で因縁つけられてな・・・これはヤバイ、どうしよ・・って思っとったら、そこに、真打ち登場!ヤンキー姉ちゃんが出てきて、一波乱はまぬがれたんや。まあ、そのヤンキー姉ちゃんヤンキーから好かれとったし、うまいこと仲裁したんやろな。それからやな、伝説が始まったんわ。」
なみ「かっこいいーー!!それで、それでどんな伝説なの?」
アキラ「まあ、手短に言うとやな、そのヤンキー姉ちゃんに超利用されよったんや。例えば、朝にしても遅刻を見逃してやったりな、テスト前はつきっきりで教えたったりな、雨が降ったらおのれの傘を貸したったりな・・・。周りからは、お前は単に利用されとるだけやぞと避難ゴウゴウやったにも関わらず・・・。他にも、男は女に守られたらあかんとかいうて、空手も習いだす始末や・・・。」
なみ「きゃー!かっこいいー!もう、なみだったら速攻ほれちゃうけどね。」
アキラ「ところがどっこい、その姉ちゃんかなりやり手でな、そいつは何度も何度も告白もしたし、デートにも誘った。その度に上手くかわされとったんやな。音でゆうたら”ヒョイッ”って感じや。」
おさむ「ふ〜ん・・・それで・・・。」
アキラ「そいつは、おいらの所へ何度も相談した。おいらも、それなりにアドバイスしたけど、この時ばっかりはあかんかったな・・・。」
なみ「へえ〜アキラでもダメな時ってあるんだね・・・。」
アキラ「そやな・・・押しても引いてもビクともせんかった・・いやこの表現より、のれんに腕押し・・の方がふさわしいな・・・いけそうで、いけん・・・いけなさそうで、なんかいけそう・・・っちゅう関係や・・・。そんでや、時も過ぎ、そいつもあきらめかけたかに見えた・・・。ところが!」
なみ「ところが!」
アキラ「卒業間際になって、今まであきらめようと何回も試みたけど、あきらめられんっておいらに泣きついてきょったんや。往生際が悪い!しかし、おいらも男や、困っとる奴は見捨てられん。でや、その日から三日三晩寝んと編み出した技が、”卒業の答辞で告白する”っちゅう技やったんや。」
おさむ「え、それって・・・技なの・・・。僕だったら絶対、断ると思うけど・・・。」
なみ「いやいや、甘いね、おさむ。本当に好きならそれくらいしなきゃ。」
アキラ「いやいや、そいつそれはできんとかゆって断りよったんや。」
なみ「あ・・れ・・そうなの・・?」
アキラ「そうそう、そんでどんなに説得しても、それだけは勘弁してくれって言いよったから、ここは策士アキラ・・・こっそりとそいつの答辞をすげ変えたんや・・・ニャハハハハ・・・」
なみ「アハハハハハ・・・アキラやるじゃん!!」
おさむ「いや、アハハハって・・・・それって・・・いいの・・・。」
アキラ「まあまあ、結果オーライや。ついにきたる卒業式・・・そいつは緊張しとったんかしらんけど、何も考えんと棒読みやった・・・。言ったことさえ気付かなんだみたいや・・・。当然、超盛り上がって、みんなそいつとヤンキー姉ちゃんに惜しみない拍手が送られよった。おいらもまさかこんなに上手くいくとは思わんかった・・・。と、まあ、後日談になるけど、なんのことはない、そのヤンキー姉ちゃんも怖かったんや・・・そいつと私なんて不釣り合いだし・・・私バカだから・・・って・・・。」
なみ「・・・うん・・・泣かせる話ね・・・グスッ・・・。」
アキラ「で、今はガキんちょもできて、仲良くやってるとさ・・・チャンチャン!」 (つづく)

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